日本音楽療法学会LSC(ラーニング・サポート・センター)での講義のご報告 [2016年01月19日(Tue)]
教育・研究課所属の井上の講演報告を、以下の通りさせていただきます。
昨年12月13日(日)に行われました、日本音楽療法学会関東支部主催のLSC(ラーニング・サポート・センター:http://www.jmta-kanto.jp/news/2015/20151013.pdf)での講義についてご報告いたします。 はじめに、LSCについてご紹介いたします。LSCは、日本音楽療法学会関東支部(http://www.jmta-kanto.jp/)の母体である日本音楽療法学会(http://www.jmta.jp/)音楽療法推進特別委員会のテストケースとして、「音楽療法の経験が浅い会員を対象に、音楽療法士の仲間づくり等を通じてより良い音楽療法を実践できる力をつけることを目指す」事を目的し、2年の期間を設け実験的に実施されている講習会です。日本音楽療法学会には、9つの支部会(北海道・東北・関東・信越/北陸・東海・近畿・中国・四国・九州/沖縄)がありますが、現時点では、その支部の状況に合わせた形で実施されているのが現状だそうです。今回は、関東支部講習会として4回目のLSCが行われ、当法人スタッフである井上と飯島が、講師とアシスタントという立場で講義を担当させて頂きました。 さて、当日のLSCの様子です。LSCは、楽器演奏ワークショップ(児童)、ワークショップ(高齢者)、ピアスーパービジョン@Aという形で構成されており、私達の担当は、楽器演奏ワークショップ(児童)でした。担当講義は、午前・午後各2時間で、受講者は、共に各8名ずつ(午前/午後で計16名の参加=児童)という少人数でした。講義の間には昼食を挟んでの茶話会や、一日の終りにはまとめの会があったりと、講習会のコンセプトである音楽療法士の仲間づくりには最適な人数だったと思います。 次に、講義の内容です。この講習会は、音楽療法士の認定を受けて5年以内の方が対象だったのですが、あえてハウツーやネタ集めではなく、「音楽療法とは・・」を自分の言葉で表現してみること、「音楽療法士」はどんな仕事をする人かを自分の言葉で伝えられることなど、音楽療法の理論やエビデンスを元に、自分のやっていることを考えて他者に3分で説明をしてもらうところから始めました。続いて、実際に楽器を手に取り、子どもの特性を考えての楽器選び、提示の仕方、音環境の配慮など実践に繋げられる楽器の利用方法について話しました。その後は、受講者の方にある特定の特徴を持った子どもをイメージしてもらいながら、自分なりの実践方法をそれぞれ組み立てもらい、それを発表してもらいました。 講義内容の一例ですが、音楽(歌と楽器)を使って自己紹介を行いました。開始前は、みなさんとても緊張した面持ちでしたが、音楽を使っての自己紹介が進むと次第に笑顔と交流が増えていきました。音楽を使っての自己紹介は、その人なりに音楽の使い方を考え、「音楽を使うと伝えやすい、伝わりやすい」と感じてもらうのがねらいでした。受講者の方々はみなさん個性的でひとりとして同じメロディーはありませんでした。戸惑われる方もいらっしゃるかなと思ったのですが、意外と積極的で、自分の知識と経験を駆使されながらイメージを膨らませ、真剣に演習に取り組まれていました。講義も終盤になってくると、受講者の方はたくさんの発信・発言をされているように思いました。きっとそこには新たな疑問や意気込みも生まれたと思います。2名1組でのクループ演習では、お互いに意見を出しあってもらい、楽器を使った活動を組み立てて頂きました。どのグループも試行錯誤を重ねながら、自分で考えた内容をしっかりと発表されていました。 最後に、今回の講習会を通して、受講者の方々が、様々な音楽や楽器を「道具」として駆使し、実践の幅を拡げていくことの大切さと、理論に基づく臨床の組み立てにはエビデンスを理解し、相手に合わせた楽器の選択と使用の意義を感じていただけたのなら、自分の講師としての役割を果たせたのではと思います。受講された方々には、今後も多くの場面で音楽療法士として活躍していただきたいと感じた一日でした。このような機会を与えて下さった委員の皆様に感謝致します。 こっこの療育の柱の一本である「音と色の療育」 ~ユニークなアプローチに音楽療法の考え方が導入されています。~ 私達の関わる子ども達(1歳半から6歳の就学前乳幼児)は、通常ことばで訴えることは難しいので、泣いたり、奇声を上げたり、癇癪を起こしたりします。はじめは、音楽に対しても不快だったり、恐怖を感じたりする子どももいます。しかし、私達の実施しているプログラムのひとつ「音と色の療育(音楽療法と色・造形をベースとした療育)」に参加する子ども達は、音楽を通して自己表現を始め、ことばでの自己表現が苦手でも、音やリズム、メロディーと共に自分を表すことで、相手に伝えられる、伝わると感じ、そして、人と関わるのは楽しいと感じられることを体験していきます。音楽療法士は、音楽を効果的に使用することで、相手を引き出す事ができるテクニックを持っている職種です。 (文責:井上聡子) ![]() 講義の様子 |